映画「ミルク」 ハーヴェイ・ミルク=最後の8年間=

アメリカ司法史上で歴史に残る1日になったのが2013年6月23日です。なぜアメリカ司法史上で歴史に残る日になったのかというと、連邦最高裁判所が連邦法における「結婚」を男女間に限ると規定していた「結婚防衛法」を【違憲】とするいう判決を下したからです。同性での結婚禁止を違憲という判断は9人の判事のうち5対4という結果でした。

この歴史的な日をうけてホワイトハウスもこの日ばかりはホワイトハウスをライトアップして「レインボーハウス」となり、オバマ大統領は公式ツィッターで「結婚の平等に向けた歴史的な1歩だ」と述べました。この歴史的な1歩となった判決になったことを、もしハーベイ・ミルクがいたら大いに喜んだことと思います。

映画『ミルク』

ショーン・ペンが映画「ミルク」の主人公のハーヴェイ・ミルクを演じていますが、ハーヴェイ・ミルクは実在した人物で1970年代にアメリカで自分自身がゲイであることを明らかにした上でサンフランシスコ市の市会議員に立候補して当選して、公職者となりゲイの権利を獲得するために活動した人物です。

今でもハーヴェイの功績をたたえて、サンフランシスコのカストロ通りの入り口に「ハーヴェイ・ミルク・プラザ」があります。ハーヴェイ・ミルが活動していた時代は、今とは比べものにならないほどにLGBT(同性愛者などの性的少数者)に対しての風当たりはかなり激しく強いものがありました。そんな時代に今の状況を変えようと、奮闘するハーヴェイ・ミルクの生涯をハーヴェイ・ミルクと同じくゲイであることをカミングアウトしているガス・バン・サント監督が映画化しました。

ハーヴェイ・ミルクを演じたショーン・ペンはこの作品で2度目のアカデミー賞主演男優賞を受賞したほか、作品賞を含めた8部門にノミネートされてアカデミー賞脚本賞を受賞したハーヴェイ・ミルクの48年間の人生最後の8年間の話です。

ざっくりあらすじ

ハーヴェイ・ミルク(ショーン・ペン)は1972年に恋に落ちます。恋に落ちた相手はミルクより20歳年下のスコット・スミス(ジェームズ・フランコ)です。彼と一緒にサンフランシスコへ引越し、サンフランシスコのカストロ通りで“カストロ・カメラ”という名前のカメラ店を開業しました。

とっても社交的で明るい性格の店主のミルクを慕って“カストロ・カメラ”のお店の周囲には、ヒッピー達に同性愛者達が集まるようになりました。そんなミルクを中心にした同性愛者やヒッピー達を苦々しく思っているのは、保守的なカトリックの住民達です。保守的な人たちに対抗する形で、ミルクは自分達で新しい商工会を設立して自ら“カストロストリートの市長”という肩書きを作り出し、周囲からも“カストロストリートの市長”と呼ばれるようになりました。

そして1973年11月に「同性愛者を含めたすべての人間の権利と機会の平等」を訴えて、サンフランシスコ市の市政執行委員に立候補します。残念ながら落選して、2度目の選挙でも同じく落選しますがミルクが選挙にでるたびに着実に支持者を増やして生きます。ミルクはゲイと公言しているため、最初はゲイと聞くだけで毛嫌いしている人たちにも着実に支持者が増えていきました。ミルクの誠実な人柄とゲイやレズビアンだけではなく、黒人や他の有色人種そして老人といった社会的マイノリティのために、ミルクが行動を起こしていることを理解したからです。

ミルクの「希望を持つことの大切さ」を訴えた最大の理解者が、当時のサンフランシスコ市長のジョージ・マスコーニ(ヴィクター・ガーバー)です。サンフランシスコ市長のモスコーニの知遇を得て、ミルクは政治的な活動の幅をさらに増やしていきますがミルクの恋人スコットとの間には別れが訪れました。

そして3度目の選挙となった1977年に、遂に初当選を果たします。ミルクの当選は、自分自身が同性愛者であることを公言したうえでの当選でこれはアメリカ市場で初めてとなる大都市サンフランシスコの公職者の誕生となりました。

市議となったミルクは、“プロポジション6号”という住民投票を巡り争うことになります。この“プロポジション6号”とは同性愛者の教師を性的指向を理由にして解雇できるというものでした。ちょうどこの頃は、アメリカの各地で同性愛者への権利が剥奪することが進んでいただけに、もしこの“プロポジション6号”がカルフォルニアで成立すれば、同性愛者だけではなく全ての社会的マイノリティへ対する差別がさらに拡大していくという恐れがあったからです。

1977年にミルクはサンフランシスコ市の行政執行委員に立候補します。そして少数派を統合する一大キャンペーンを繰り広げていきました。それはミルクの命を賭けた戦いでもあり、理解者も増えましたが強い反発も生み出しました。そしてミルクが周囲を巻き込みながら、支持者を増やしていう中で対立も激化してきて、身の危険を感じるようになりテープレコーダーに遺言を記録し始めていきます。

映画の中でミルクがスコットに向かって自分の命がそう長くはないことについて「ボクは50年も、生きられないよ」とつぶやくシーンがあります。このシーンのように、ハーヴェイ・ミルク本人自身が50年も生きられないだろう思っていました。またミルクのバースデーパーティが盛大に行われるシーンがありますが、この場面でスコットがミルクに「50年間生きられそうだよ!」と話しかけますが、ミルクが暗殺されるかもしれないという思いを抱いていたからこそ、ミルクを安心させようとしたのでしょう。

アメリカの全土で、同性愛者への権利が剥奪しようとする中で、カリフォルニア州で“プロポジション6号”が成立したとしたら、同性愛者だけではなくさらにもっと激しく全ての社会的弱者に対しての差別が拡大するという恐れがあるため、暗殺されるかもしれないという思いを抱えながらも、ミルクは強い信念をもって“プロポジション6号”に対して反対する運動を繰り広げていきます。この法案を通そうとする賛成派との間では、熾烈な戦いを極める中でハーヴェイ・ミルクは心強い賛同もとりつけます。現職の合衆国大統領のレーガンからの賛同そして、元大統領のカーターからの賛同も取り付けて、1978年11月にカリフォルニアの住人によって“プロポジション6号”を否決となりました。

ミルクが見事に“プロポジション6号”の法案を否決に持ち込み同じ月の27日。ミルクは市庁舎でジョージ・モスコーニ市長とともに糾弾に倒れます。ハーヴェイ・ミルクは自身が50歳まで生きられないと思っていた通り48歳で亡くなりました。モスコーニ市長とミルクを射殺したのは、元同僚で市政執行委員のダン・ホワイト(ジョシュ・ブローリン)です。

ハーヴェイ・ミルクの葬儀が執り行われた際に、ミルクの死を悼んで同性愛者だけではなくサンフランシスコの市民たちがキャンドルを片手に自然発生してミルクの通夜にカストロ地区から市庁舎までを行進しました。そしてこの通夜に流された「キャンドルライトの通夜のビデオ」には、ミルクのメッセージが含まれたものが流されていますがそれにはミルクが自身が自分が暗殺によって死んだ場合に限って再生するようにとあらかじめ記録されていたものでした。

映画『ミルク』主なキャスト

  • ハーヴィー・ミルク:ショーン・ペン・・・この作品でアカデミー主演男優賞受賞、ゴールデングローブ賞 主演男優賞などにノミネート
  • クリーヴ・ジョーンズ:エミール・ハーシュ・・・2007年にショーン・ペン監督作品で高い評価を受けました。
  • ダン・ホワイト: ジョシュ・ブローリン ・・・アカデミー助演男優賞にノミネート、ニューヨーク映画批評家協会賞助演男優賞を受賞。
  • スコット・スミス:ジェームズ・フランコ・・・ インディペンデント・スピリット賞助演男優賞を受賞したほか、グッチの香水のモデルとなったりと大活躍。

『ミルク』が受賞した賞

  • 第81回アカデミー賞・・・ジョーン・ペンが主演男優賞。脚本を担当したダスティン・ランス・ブラックが脚本賞。
  • 第43回全米映画批評家協会賞・・・ショーン・ペンが主演男優賞
  • ニューヨーク映画批評家協会賞・・・監督はガス・ヴァン・サントで作品賞を獲得。主演男優賞の他、ダン・ホワイトを演じたジョシュ・ブローリンが助演男優賞。
  • ロサンゼルス映画批評家協会賞・・・ショーンペンが主演男優賞
  • 第24回インディペンデント・スピリット賞・・・1984年に設立された賞でアカデミー賞の前日にも開催されています。助演男優賞と新人脚本賞を受賞。
  • 放送映画批評家協会賞・・・1995年に設立された賞です。主演男優賞はショーン・ペンそしてアンサンブル演技賞として作品「ミルク」が獲得しました。
  • 全米映画俳優組合賞・・・アカデミー賞はどうなるのか?!とアカデミー賞の前哨戦ともいわれています。ショーン・ペンが主演男優賞を受賞。
  • 全米脚本家組合賞・・・1949年から開催されている賞で、オリジナル脚本賞を獲得しました。
  • ボストン映画批評家協会賞・・・拠点はもちろんマサチューセッツ州ボストンです。監督賞・主演男優賞・脚本賞の3部門で受賞。
  • ナショナル・ボード・オブ・レビュー・・・世界で一番古い映画普及促進活動をしている団体から送られた賞です。助演男優賞を受賞。
  • パームスプリングス国際映画祭・・・1989年に開始されて毎年1月に受賞式がカリフォルニア州パームスプリングスで開催されています。主演男優賞を受賞。
  • フェニックス映画批評家協会賞・・・2000年設立されて、毎年12月に受賞を発表しています。主演男優賞とアンサンブル演技賞を受賞。
  • サンフランシスコ映画批評家協会賞・・・2002年設立されました。作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞の4部門で受賞しました。
  • サウスイースタン映画批評家協会賞・・・合衆国の南東部を拠点にしている映画批評家協会が発表する賞です。作品賞、主演男優賞、脚本賞の3部門で受賞。

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